10月 涼風に抱かれ、丸く伸び伸びと・・・「寒露」のカブ
えっ!?日本の東西で栽培されるカブの種類が違うって本当?
Q:秋の気候が進行し始めると、徐々に根菜の季節がやって来ますね。カブは「すずな」という呼び名で春の七草の一つに入っていますが旬は秋なのですか?
内田―――カブはもともと地中海南西岸やアフガニスタンの冷涼な場所にルーツを持つと言われ、生育適温は15℃~25℃位、寒さには強いですが暑くなるに従い成長が鈍っていく植物です。日本では春と秋にこの気温の時期がありますから露地栽培の旬は2度あるのですが、冬に向かって気温が低下するに従い日ごとに甘みを増してゆく秋が最も美味しいと言われています。ですから私は「カブは寒露の頃から旬が始まる」と考えています。寒さにとても強いので春の声が聞こえる頃まで収穫が続きます。七草がゆをいただく頃は旬の真っただ中ということになりますね。最もおいしい時期です。
Q:お店でいろいろなカブを見かけますがどのくらいの種類があるのでしょう?
内田―――国内で約80種類と言われています。日本に渡来したのは弥生時代という説がありますが定かではありません。奈良時代には朝廷により本格的に栽培が奨励された記録が残っているそうですから渡来してから長い歴史を持つ野菜です。ナスと同じように日本全国の気候風土に順応し、今では在来野菜として地域を代表する伝統野菜の名でも知られるものが数多くあります。北海道の「大野赤かぶ」、山形県の「あつみ温海かぶ」、東京都の「金町小かぶ」、滋賀県の「日野菜」、京都府の「聖護院かぶ」、大阪府の「天王寺かぶ」など多くのものが地域に根付いています。
内田―――日本のカブを分類すると、ヨーロッパから朝鮮半島を経て渡来した寒さに強い洋種系と、中国を経由して渡来した和種系の大きく2つに分けられます。面白いことに愛知県から岐阜県を抜け福井県に至る線を境に、東側は主に洋種系、西側は和種系、と栽培される株の種類が2つに分かれていることがわかっています。この境界を植物学者の中尾佐助氏が「かぶらライン」と命名しました。「かぶららいん」を境に東側に赤カブの系統が多いのも特徴の一つです。
内田―――カブはもともとは紫色だったそうです。それが様々な土地の風土気候に順応し姿形を変えて現在に至ります。フランスには黄色いカブも店頭に並びます。
内田―――太陽の寿命は約40億年と言われていますが人間も含めて地球と共感しあいながら様々な状況に対応して進化していくことが大切なのだ、と野菜たちを見ているとつくづく思います。
Q:良いカブを選ぶポイントを教えていただけますか。
内田―――身の形が丸く、肌が艶やかで、茎の付け根部分の肩のところがこんもり盛り上がり、触れたときに固く身が締まっているものを選んでください。更に葉付きのものであれば葉を守るクチクラ層(クチンと呼ばれるワックスや脂肪酸などの化合物で構成された乾燥や紫外線から守る被膜)がきちんと働いている淡い緑色で葉柄がまっすぐに立っているものが栄養がいきわたりストレスなく成長している証です。身の表面に傷があったり割れているものは水不足や霜にあてられ成長が止まってしまっている可能性があります。葉や茎に張りがないものは収穫してから時間がたってしまっているものですから選ばないようにしましょう。
Q:内田流「美味しく食べるコツ」は?
内田―――まず保存方法ですが、葉付きのカブは身の水分を葉にとられてしまうので買ってきたらすぐに茎を少し残した状態で切り分けます。更に葉の付け根と茎を切り分け小さくしてビニール袋などにいれて冷蔵すると新鮮さを保つことができます。
内田―――調理するときには、身の部分は少しだけ茎のついた胚軸から下3ミリくらいのところで切り分けます。胚軸部分には栄養が詰まっていますから捨てずに先ほど保存した葉や茎と一緒に料理に利用して下さい。カブの葉には身にはないベータカロチンが豊富に含まれています。またカリウム、カルシウムなども身より豊富、ビタミンCも含まれているという優れものですから是非捨てずに食べていただきたいと思います。
内田―――身の部分は皮をむき胚軸を落とした断面を下にして半分に切り更に縦半分に切ります。まだ旬の走りの若いものであれば皮ごと食べることもできます。皮の部分にも多くの栄養分が含まれていますので、剥いた場合も素揚げしたり、きんぴらなどにして捨てずに食べてみて下さい。
内田―――煮物、焼き物、蒸し物などいろいろな料理に使える万能野菜ですが、カブそのもの風味を味わってみるとほかの料理への想像力も広がるかと思いますので「簡単マリネ」の作り方をご紹介します。
内田―――下処理したカブ2つを縦に2~3ミリにスライスします。15グラムずつの塩・胡椒をふり30分ほど寝かせます。するとカブから水分が出ますのでキッチンペーパーなどでふき取り、オリーブオイル、ブラックペッパーを適宜振りかけたら出来上がりです。旬のカブの甘み、旨味をそのまま感じてみてください。