10月 秋冬のアツアツ、ホクホク、ワクワク!・・・「霜降」のサツマイモ
掘って満足!食べて満悦!この重さと甘みがたまりません!
Q:サツマイモは昔から秋冬の日本の風物詩ですがどのような歴史を持つのでしょう?
内田―――ルーツを南米アンデス山地に持ち、紀元前にメキシコで栽培され始めたところから始まり、15世紀末に南アメリカ大陸からヨーロッパや東南アジアへと伝わります。東南アジアに渡ったものがやがて中国へ、そして琉球へと伝わりました。1609年に江戸幕府命により琉球王朝を統治した薩摩藩が現在の鹿児島県に持ち帰り栽培を開始したのが日本のサツマイモ史の始まりです。それ以前に渡来した可能性もあるそうですが栽培された記録はありません。その後、たびたび起こる飢饉を回避するため救荒対策として幕府からサツマイモ栽培の命を受けた武士・青木昆陽が薩摩から江戸にサツマイモを取り寄せ試行錯誤の末全国で広く栽培が開始されたのは有名な話です。
内田―――現在では国内で約40種類が栽培されており、令和4年には鹿児島県、茨城県、千葉県、宮崎県、徳島県の5県で全国生産量の約80%を占めるようになりました。江戸時代から全国的に作られているわけですから、徳島県鳴門市の鳴門金時、鹿児島県の安納芋、兵庫県尼崎市の尼いも(あまいも)、埼玉県川越市の川越いも他、地方の風土に呼応しながら、もちろん大量ではありませんが伝統野菜として根付き大切に育てられているものがたくさんあります。こうしてサツマイモは日本の秋冬を代表する“潜り野菜”へと種をつなげてきたのです。
スイーツにも、ダイエットにも引っ張りだこ。
Q:なんといっても寒くなって来た時の焼き芋の甘さは格別ですが、これは焼くことによってどういう効果が出ているのでしょう?
内田―――サツマイモは人の唾液などにも含まれている、デンプンを分解するβアミラーゼという消化酵素を持っています。この酵素は加熱することで働きが活発になります。サツマイモはデンプンが豊富な野菜ですから焼いて加熱することでβアミラーゼが活性化しデンプンを麦芽糖に分解します。この麦芽糖が芋にまろやかな甘味を与えているのです。ジャガイモにもこの酵素は含まれているのですが同じように加熱しても甘みが際立たないのはサツマイモと比較して酵素の分量が少ないからです。
内田―――βアミラーゼが活性化する温度は60℃~65℃。お店に並ぶ焼き芋はこの温度を保ちながら調理保存しβアミラーゼの効力を巧く利用することでサツマイモならではの甘味を引き出しているのです。
Q:最近はダイエット食としても人気のサツマイモですが、どのような栄養分を持っているのでしょう?
内田―――歴史のお話で触れましたがサツマイモは古くから救荒食として重宝されてきました。近代日本でも食べ物が手に入らない太平洋戦争の頃主食となりましたし、現在も主食として食卓に並んでいる国もあるのです。サツマイモにはそれだけ身体を保つ栄養分が含まれています。まずは皮と果肉に含まれる豊富な食物繊維です。その量、ジャガイモのおよそ二倍。お腹が満たされるのは言わずもがなですが、切ったときに出てくるヤラピンという成分ととともに排泄を助け腸内環境を整えてくれる嬉しい働きがあります。そして豊富なビタミンCには抗酸化作用があり動脈硬化や皮膚の老化などを防ぎます。更に塩分を輩出し血圧上昇を抑えてくれるカリウム、血中コレステロール値を下げてくれるβカロテン他沢山の栄養素を含んでいるのです。ちなみに紅はるか、小金千貫など黄色の果肉のものにはβカロテンが特に多く含まれています。紫色のサツマイモも最近店頭でよく見かけますが、紫の果皮、果肉の種類にはポリフェノールが特に多く含まれています。ダイエットに適している、と言われるのはデンプンを多く含んでいる割にカロリーが低いということが最大の理由でしょう。白米がごはん茶碗1杯150グラムで約234キロカロリー。それに対してサツマイモ150グラムは198キロカロリーなのです。大きさは普通サイズのサツマイモの半分くらいです。ですから近年ではサツマイモダイエットという呼ばれ方をしているくらい人気となっています。ただ主成分がデンプンということは糖質ですから就寝前に食すると脂肪となってしまいますのでそこは要注意です。
内田―――またダイエットとは相反しますが、近年のスイーツブームの中で焼き芋、サツマイモを利用したスイーツ類や菓子類の人気はうなぎのぼりとなっています。焼き芋ブームまで始まり、もともと糖度が高く熱を加えることでさらにまろやかな甘さを醸し出す紅はるかや安納芋が完売するほど熱気にあふれ、2021年まで減り続けていた全国生産量は2022年、2023年と、2年連続で増加しています。
内田―――時代、風土に順応して生きながらえ進化してきたサツマイモは今まさに花開いていると言えます。